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糖尿病と感染症

糖尿病では感染症に罹りやすく、感染症が速く重症化することが多く、回復にも時間がかかるといわれています。その原因には、糖尿病による高血糖が引き起こすところの、免疫機能の低下や毛細血管の血流の悪化が挙げられます。血糖値が高くなると、白血球成分のひとつである好中球の貪食機能(体内に侵入した細菌やウィルスを攻撃する機能)や免疫反応(抗体の反応)が低下します。細小血管(毛細血管)の血流障害で、酸素・栄養不足で細胞の働きも低下しますし、白血球が感染部位にとどきにくい状態になっています。そのため、肺炎・胆のう炎・膀胱炎・腎炎などの感染症の病気が起こりやすくなります。細胞の働きが弱っているところに抗生物質などの薬もとどきにくいため回復にも時間がかかります。加えて糖尿病性神経障害があると、尿路感染症や胆のう炎のリスクが更に高くなります。糖尿病性神経障害は自律神経障害による内蔵機能の乱れで膀胱炎・胆のう炎の原因になります。また、末梢神経のひとつの痛みを司る知覚神経の障害で症状が現われにくく、気付かないうちに感染症が進行してしまいます。糖尿病の人が感染症に罹ると、血糖値がいつもより更に上昇して血糖コントロールが大変になるため糖尿病そのものにも影響がでるだけでなく、さらに感染症を悪化させてしまう悪循環が生じます。
糖尿病では全ての感染症に罹りやすいといえますが、尿路感染症・風邪(上気道炎=鼻・喉の炎症)・肺炎・結核・胆のう炎・皮膚感染症(水虫やカンジダ症など)・歯周病(歯肉炎・歯槽膿漏)には日頃の注意が必要です。

糖尿病と歯周病の関係

歯周病は糖尿病の合併症のひとつといわれています。糖尿病は歯周病を悪化させるだけでなく、歯周病も糖尿病を悪化せる相互関係が指摘されています。糖尿病患者は歯周病になりやすく治りにくい、そして、歯周病が糖尿病を悪化がさせている可能性がある、ということです。実際に、歯周病の治療で血糖値のコントロールがしやすくなったとの報告もあります。
歯周病は歯の周囲のハグキなどの組織の細菌感染による慢性的感染症です。糖尿病で血糖コントロールが不良で血糖値が高い状態では、唾液分泌の減少・白血球機能の低下・微小血管障害・コラーゲン合成の阻害・終末糖化物質(AGE)の産生が起こり、歯周病菌が増殖しやすい環境になり歯周病が進行すると考えられています。重度の歯周病になると炎症を抑えようと様々な炎症性サイトカイン(免疫細胞が出す物質)が上昇することで、インスリン対抗性が高くなり糖尿病を悪化させるともいわれています。
歯周病を放置して歯を失ったりして軟らかい食べ物ばかりを食べるようになると、食後高血糖(食事の後に血糖値が急上昇する状態)を起こしやすいといわれます。糖尿病患者では糖尿病でない人に比して、歯周病の罹患は約2倍以上との報告もあります。歯周病防止のためには、糖尿病を進行させない・口の中を清潔に保つことが重要です。

※歯周病は歯肉炎と歯周炎に大別されます。歯肉炎は歯肉に炎症を起こしている状態です。歯肉炎の原因は、歯と歯の間や歯と歯肉の隙間に溜まった歯垢(プラーク)や歯石です。歯肉炎は軽度の歯周病です。歯肉炎の段階では歯槽骨の溶け出しはありません。歯肉炎は歯周炎に進行し歯槽骨が溶け始めます。歯周病が進んで歯を支える歯槽骨が壊れると、壊れた歯槽骨や周囲の組織が膿として口の中に漏れ出します。この状態を歯槽膿漏と呼びます。

糖尿病の大血管障害

糖尿病の合併症という場合は通常慢性合併症を指します。糖尿病の慢性合併症に血管障害があり、血管障害は細小血管障害(細い血管に起こる障害)と大血管障害(太い血管に起こる障害)に分けられます。大血管障害で挙げられるのが虚血性心疾患(狭心症・心筋梗塞)・脳血管障害(脳梗塞)・閉塞性動脈硬化症で、糖尿病の大血管合併症のなかでは心筋梗塞が最も多いといわれています。ただし、これら大血管障害は動脈硬化を基盤とした合併症で糖尿病特有の合併症ではありません。糖尿病の合併症としても現われますが、糖尿病は危険因子のひとつであって、高血圧・高脂血症・肥満・喫煙など他危険因子と絡み合って、糖尿病の発症や経過(病期)とは関係なく発症します。糖尿病がある場合は、糖尿病でない場合よりも重症で治療効果が悪いとされています。

※糖尿病性壊疽は神経障害と血管障害が原因です。血管障害としては、閉塞性動脈硬化症と密接に関連しています。閉塞性動脈硬化症とは、腹部~下肢の動脈(大動脈下部~大腿動脈の範囲)によく見られる血行障害です。

糖尿病と閉塞性動脈硬化症

閉塞性動脈硬化症(ASO)と関連して起こる糖尿病の合併症に糖尿病性壊疽(足趾壊疽)があります。閉塞性動脈硬化症は壊疽を起こす最も多い病気といわれています。閉塞性動脈硬化症(ASO)は50歳以上の男性に好発する病気ですが、糖尿病があると20歳代からでも発病しますし男女差はありません。糖尿病性閉塞性動脈硬化症の特徴は、糖尿病でない閉塞性動脈硬化症よりも血行障害が早く進行し症状が重症化することです。糖尿病性閉塞性動脈硬化症が重症化しやすい原因が重なることで、足が壊疽を起こしやすく壊疽の範囲が急速に拡がって、感染症を併発しやすいため手遅れになって足切断という事態に陥りやすいのです。
■糖尿病性閉塞性動脈硬化症が重症化しやすい原因
○膝から下の動脈である下腿動脈の多発分節性狭窄と閉塞
○下腿動脈~足部動脈の石灰化による血行障害
○毛細血管の血行障害(神経障害による血管反射の障害による)
閉塞性動脈硬化症(ASO)の原因は粥状硬化とよばれる動脈硬化です。足の動脈壁にコレステロールが沈着することで動脈が狭くなり血栓がこびり付いたりして更に狭くなり、最終的に血管が詰まって血液が流れなくなります。そのために栄養や酸素がどどかずに手足の先端から細胞が壊死していきます。放置していると皮膚が黒く乾いてみえるようになり欠損したり腐ってきます。閉塞性動脈硬化症の症状は、歩くとふくらはぎが痛みますが一休みすると痛みが消えて歩けるようになる症状を繰り返す間欠性跛行とよばれる初期症状に始まり、進行すると足の指先に小さな傷ができて徐々に範囲が広がり潰瘍に進行して痛みも伴います。その痛みは徐々に強くなって夜寝ていても痛みで目が覚めたり、痛みで眠れなくなったりします。壊疽とは、局所的に壊死に陥った皮膚から皮下組織が腐敗菌感染したもので、変色(黒色や褐色)し悪臭を放ち壊死部分が脱落するなどの症状があります。壊疽の放置は敗血症による死亡に繋がります。そのため酷い壊疽では足切断を余儀なくされることもあります。
■閉塞性動脈硬化症の症状
○歩くと足が痛くなるが、一休みすると痛みが消えて再度あるけるようになる。(間欠性跛行)
○足が冷たい、足がしびれる。
○足の色が悪い。
○足の傷がなかなか治らない。
○軽い打撲で傷が大きくなったり、治りが悪い。
○皮膚が黒くなって欠損したり脱落したりする。(壊死・壊疽)

糖尿病性壊疽の特徴

日本の糖尿病性壊疽の特徴は神経障害と血管障害の混合型が多いことです。また、この糖尿病性壊疽の特徴は糖尿病性神経障害(末梢性の神経障害)を基盤としているため、痛みを感じる知覚神経の麻痺によって、靴づれの傷・水虫・深爪・たこなど足趾(そくし・足の指)にできた小さな傷が化膿しても気付かずに悪化させてしまうことも少なくありません。たとえ足趾(そくし・足の指)の異常に気付いていても痛みがないため放置して病変部に細菌感染して壊疽や潰瘍化を引き起こしたりします。壊疽を放置していると敗血症を引き起こし死亡に至ります。糖尿病性閉塞性動脈硬化症では壊疽が急速に進むため足切断が必要なケースが多いといわれています。閉塞性動脈硬化症は腹部~下肢動脈(大動脈下部~大腿動脈)によく起こる血行障害です。小さな傷や圧迫を受けやすい足趾(そくし・足の指)の先など血流の悪いところから皮膚の壊死・潰瘍が生じます。血流が悪いために治りが悪く病変部が広がっていきますから、足切断を避けるための適切な治療が早急に必要になります。
糖尿病性壊疽の予防は、糖尿病のコントロールをして神経障害が出ないようにすることはいうまでもなく、日常生活の注意事項があります。やけど以外の糖尿病性壊疽は、主に体重の掛かる足底部や趾間に好発しますから、足の小さな傷がないかどうかのチェック、また足を清潔に保つよう気を配ることが大切です。

糖尿病性壊疽の治療

糖尿病性壊疽の治療においては初期治療が予後を大きく左右します。厳格な血糖のコントロールはもちろん必須ですが、糖尿病性壊疽の治療として、局所を安静して抗生物質で感染症治療をしたり血行促進剤などの薬物治療などの保存療法で多くは治癒するとされています。これら治療に加えて補助治療としてのバーガー体操は大変有効とされています。糖尿病性壊疽の治療を早期に適切な治療方法で行えば、糖尿病性壊疽による下肢切断はそうあることではないといえます。ただ、糖尿病性閉塞性動脈硬化症による壊疽の場合は治療が難しく下肢切断ということもあります。糖尿病性閉塞性動脈硬化症のように血行障害による潰瘍や壊疽がある場合は、バイパス手術や切断手術があります。壊疽になったら即切断手術というのではなく、バイパス手術を検討するのが良いようです。バイパス手術は壊疽になって黒くなった組織を救うことはできませんが、手術時点で生きている組織・足・趾を救う手術です。切断手術において、壊疽した局所が黒くその範囲や感染が足首を越えている場合は膝下切断が、長期間治らない壊疽や潰瘍の場合は膝上切断が検討されるようです。下肢切断で考慮すべきは、切断手術後の生命予後はあまり良好とはいえないことです。
糖尿病性壊疽になったら早期治療が重要ですが、壊疽にならない予防が先決です。血糖のコントロールはいうまでもなく、日頃から足の異常のチェックと、フットケアとして足を清潔に保つ・深爪をしない・足にあった靴を履くなどの心がけが大切です。

糖尿病性壊疽マゴット治療

マゴットセラピー(MDT・マゴット治療)が糖尿病性壊疽の治療として注目されています。マゴット治療とは、無菌マゴット(うじ虫)を用いて四肢創傷の潰瘍の治癒を促す治療方法です。ウジムシを使うマゴットセラピーの治療方法は、無菌ウジムシを数日間患部に置いてガーゼなどで覆うという治療です。マゴットの作用は、壊死した組織を溶かして創を清浄にする、殺菌作用がある、創傷の治癒を促すこととされています。もともとマゴット治療(マゴットセラピー)とは、抗生物質や外科的治療(手術)が登場し進歩するまでは潰瘍の治療方法のひとつでした。再びマゴット治療(マゴットセラピー)が注目されている理由は、抗生物質抵抗性をもつ感染性潰瘍が現われ治療が難しくなってきていることなどによると考えられます。ただ、マゴット治療(マゴットセラピー)を実施している病院は少なく、健康保険対象外で全て自己負担(自費治療)になります。糖尿病性壊疽の治療にはバイパス手術や切断手術がありますが、足を切断するまえに医師に相談してみるのもよいと考えられます。マゴット治療が適応するかどうかは、マゴット治療のできる病院での診断が必要です。

※マゴット治療とは、マゴットセラピーとも呼び、MDTは「Maggot Debridement Therapy」の略語です。

糖尿病の急性合併症

糖尿病の合併症というと一般的に慢性合併症を指しますが、糖尿病の合併症には急性合併症があり、代表的なものに糖尿病性昏睡と急性感染症が挙げられます。治療の進歩、特にインスリン療法によって発症と予後(経過)は著しく改善されています。ですが、糖尿病の急性合併症は文字通り急に発症しますから、本人が対処できないこともあります。家族など周りの人が症状や対処法を理解しておくことが大切です。
■糖尿病の急性合併症:糖尿病性昏睡
糖尿病性昏睡には、低血糖性昏睡、ケトン性昏睡(ケトアシドーシス昏睡)、非ケトン性高浸透圧性昏睡、乳酸アシドーシス、があります。
○糖尿病の糖尿病性昏睡:低血糖性昏睡
低血糖昏睡とは、血中ブドウ糖が極度に減少して起こる昏睡です。
○糖尿病の糖尿病性昏睡:ケトン性昏睡(ケトアシドーシス昏睡)
ケトアシドーシス昏睡とは、血液中に極度のインスリン不足が生じて過剰なケトン体の蓄積(ケトアシドーシスの状態)されることて起こる昏睡です。
○糖尿病の糖尿病性昏睡:非ケトン性高浸透圧性昏睡
非ケトン性高血糖高浸透圧性昏睡とは、ケトアシドーシスの状態にならず起こる昏睡です。
○糖尿病の糖尿病性昏睡:乳酸アシドーシス昏睡
乳酸アシドーシス昏睡とは、血液中に極度の乳酸増加により、血液が酸性状態になるアシドーシスによる昏睡です。
■糖尿病の急性合併症:急性感染症
糖尿病を発症して血糖値が250mg/dl以上なると白血球の殺菌作用の急速な低下により、細菌やウイルスなどに対する免疫力が低下して、感冒・結核・肺炎・尿路感染症などになりやすく、発熱を伴う時はインスリン抵抗性が増大して高血糖が増悪しやすいとされています。高齢者や、血糖コントロールが不良であったり、重篤な合併症があるほど感染症に罹りやすく重症化しやすいとされています。

糖尿病の低血糖性昏睡

糖尿病の急性合併症である糖尿病性昏睡のひとつに低血糖性昏睡があります。低血糖昏睡とは、血液中のブドウ糖が極度に減少して起こる昏睡です。低血糖性昏睡は、薬物療法(インスリン注射や経口糖尿病薬)の治療と食事療法のバランスが崩れたときに起こりやすくなります。激しすぎる運動によっても血糖値が著しく低くなります。低血糖性昏睡の症状は、血糖値が65mg/dl以下で空腹感・吐き気・頭痛など、血糖値が50mg/dl以下で冷や汗・動悸・ふるえなど、血糖値が40mg/dl以下になると痙攣・意識障害が起こり意識を失い昏睡状態に陥ってしまいます。低血糖性昏睡に陥らない対策としては、低血糖の徴候を感じるたときは、角砂糖・砂糖水やジュースなどを摂って低血糖状態を改善したり、グルカゴン注射(血糖をあげる注射)で安静にします。意識が低下しているときは、医師による早急の治療が必要になります。

※糖尿病の急性合併症である糖尿病性昏睡には、低血糖性昏睡、ケトン性昏睡(ケトアシドーシス昏睡)、非ケトン性高浸透圧性昏睡、乳酸アシドーシス昏睡があります。

糖尿病ケトアシドーシス昏睡

糖尿病の急性合併症である糖尿病性昏睡のひとつにケトン性昏睡(ケトアシドーシス昏睡)があります。ケトアシドーシス昏睡とは、血液中に極度のインスリン不足が生じて、過剰にケトン体が蓄積されることて起こる糖尿病性昏睡です。1型糖尿病で、風邪などで食欲不振のときに低血糖になるのを恐れて薬の内服やインスリンを減らした結果にケトアシドーシスの状態になるなど、1型糖尿病で起こりやすい急性合併症です。糖尿病性ケトアシドーシスの症状としては、多尿・脱水・皮膚緊張の低下・起立性低血圧・低血圧・頻脈にはじまり、血中ケトン体濃度が高くなると吐き気や嘔吐の症状が現われて体液が大量に失われ脱水症状を促進させます。急激にインスリンの作用不足が生じるとブドウ糖の利用ができないため、脂肪が代用されて副産物として産生されるケトン体が血液中に増えると、高血圧に加えて血液が酸性に傾いてケトアシドーシスという状態になります。糖尿病性ケトアシドーシスを放置するとケトン性昏睡(ケトアシドーシス昏睡)に陥り、そのままにしておくと脱水状態の症状をきたして急性腎不全や急性心不全などに至ります。糖尿病性ケトアシドーシスの症状として、ケトン臭を伴うクスマウル大呼吸と呼ばれる特徴的な呼吸がみられます。糖尿病性ケトアシドーシスの治療は、入院による持続的なインスリン投与が必要です。また、脱水症状の改善・電解質の点滴静注・酸性化した体液の補正に加えて、糖尿病性ケトアシドーシスを引き起こした原因の治療も必要になります。
2型糖尿病では糖尿病性ケトアシドーシスは殆どない症状ですが、2型糖尿病でも、糖尿病性ケトアシドーシスとは無縁ではありません。肺炎などの感染症でインスリンの効果が低くなってケトアシドーシスを引き起こすことがあります。また、2型糖尿病患者がペットボトル飲料の多飲によってケトアシドーシスを引き起こす清涼飲料水ケトアシドーシスがあります。

※糖尿病の急性合併症である糖尿病性昏睡には、低血糖性昏睡、ケトン性昏睡(ケトアシドーシス昏睡)、非ケトン性高浸透圧性昏睡、乳酸アシドーシス昏睡があります。
※ケトアシドーシスとは、ケトン体(酸性物質)が血液中に増えることで血液が酸性の状態のことです。
※アシドーシスとは、動脈血のpH(水素イオンの濃度)が下がって酸性値に傾いている状態のことです。正常な血液のpHは7.35~7.45の弱アルカリ性です。
※糖尿病性ケトアシドーシス:Diabetic Ketoacidosis (DKA)

糖尿病の高浸透圧性昏睡

糖尿病の急性合併症である糖尿病性昏睡のひとつに非ケトン性高浸透圧性昏睡があります。非ケトン性高浸透圧性昏睡とは、ケトアシドーシスの状態にならずに起こる糖尿病性昏睡です。非ケトン性高浸透圧性昏睡は、2型糖尿病の高齢者に起こりやすい急性合併症です。2型糖尿病ではインスリン分泌が少しは保たれていますから、通常はケトーシスは伴わず非ケトン性になります。シックデイ(糖尿病の人が糖尿病以外の病気にかかったときを指します)におきやすく、高血糖に脱水症状が誘発原因になって血液の浸透圧が高くなって昏睡に至ります。
非ケトン性高浸透圧性昏睡の症状としては、脱水症状から痙攣・片麻痺・幻視・言語障害などの症状が現われ、そのまま放置していると昏睡に至ります。血糖値が600mg/dl以上の高血糖で昏睡に陥りやすいとされています。非ケトン性高浸透圧性昏睡は死亡率が高いため早急な治療が必要です。非ケトン性高浸透圧性昏睡の治療としては、病院で点滴による脱水症状を阻止したり、即効性インスリン注射などの治療が行われます。治療中には、血栓塞栓症・脳浮腫・肺水腫などの合併症の回避が必要とされます。

※糖尿病の急性合併症である糖尿病性昏睡には、低血糖性昏睡、ケトン性昏睡(ケトアシドーシス昏睡)、非ケトン性高浸透圧性昏睡、乳酸アシドーシス昏睡があります。
※ケトアシドーシスとは、ケトン体(酸性物質)が血液中に増えることで血液が酸性の状態のことです。
※アシドーシスとは、動脈血のpH(水素イオンの濃度)が下がって酸性値に傾いている状態のことです。正常な血液のpHは7.35~7.45の弱アルカリ性です。
※高浸透圧性非ケトン性昏睡:Nonketotic Hyperosmolar Coma(NKHC)、HONC/HNKCとも略記されます。

乳酸アシドーシス昏睡

糖尿病の急性合併症である糖尿病性昏睡のひとつに乳酸アシドーシス昏睡があります。乳酸アシドーシス昏睡とは、膵臓での乳酸の利用が減ると同時に血液中の乳酸が極度に増加して血液が酸性になる状態が続いた結果の昏睡です。糖尿病による糖代謝異常が乳酸アシドーシスの原因になります。糖尿病ではインスリン作用不足のため乳酸が蓄積しやすい状態にあり、アルコールの多飲や心筋梗塞などの心血管疾患などが誘因となって発症するといわれています。乳酸アシドーシスの症状は、筋肉痛・筋肉痙攣・倦怠感・脱力感・腰痛・胸痛・吐き気・嘔吐などの初期症状に始まり、進行すると乳酸アシドーシスの特徴的な症状である過呼吸や脱水・低血圧・低体温などの症状が現われ、放置すると昏睡状態に陥ります。昏睡状態に至ると死亡確率が高くなります。乳酸アシドーシスの治療は、低酸素血症の改善・乳酸アシドーシスの原因になる疾患の治療・アシドーシスの補正などの治療が行われます。
糖尿病の薬物療法で使われる飲み薬のビグアナイド系の薬は、副作用として乳酸アシドーシスになる可能性があります。肝臓・腎臓・心臓が悪い、または高齢者では注意が必要といわれています。

※糖尿病の急性合併症である糖尿病性昏睡には、低血糖性昏睡、ケトン性昏睡(ケトアシドーシス昏睡)、非ケトン性高浸透圧性昏睡、乳酸アシドーシス昏睡があります。
※アシドーシスとは、動脈血のpH(水素イオンの濃度)が下がって酸性値に傾いている状態のことです。正常な血液のpHは7.35~7.45の弱アルカリ性です。
※乳酸アシドーシス:Lactic Acidosis (LA)

糖尿病性網膜症の症状

糖尿病の合併症である糖尿病性網膜症の自覚症状には、目の前に蚊が飛んでいるような飛蚊症や、大量の眼底出血の場合は目の前が真っ赤に見えたり、網膜剥離による視野が欠ける視野欠損や光視症などの症状があります。糖尿病性網膜症が悪化すると眼底出血が多くなったりしますが、視力に関わる黄斑部で起こらなければ視力低下はほとんどないようです。眼底出血などで黄斑部が腫れる黄斑浮腫になると、視界の中心が暗くなったり見にくい部分ができたりします。糖尿病と診断されたら定期的に視力検査と眼底検査を受けて、糖尿病性網膜症が重症化する前に適切な治療や手術を受けることで糖尿病が原因の失明を避けなければなりません。
糖尿病の合併症である糖尿病性網膜症の病期は、単純網膜症・前増殖性網膜症・増殖性網膜症に分けられます。増殖性網膜症になると糖尿病の内科的治療に関係なく悪化しますから眼科的な手術治療が必要になります。前増殖性網膜症の段階でも増殖性網膜症に移行しないよう眼科的手術治療が行われます。糖尿病性網膜症のレーザー治療や硝子体手術を行っても、血糖値のコントロールが不十分では糖尿病性網膜症の進行を食い止めることは困難です。糖尿病の自己管理(血糖値の管理)をして大切な眼を守りましょう。
糖尿病性網膜症の症状
○物がぼんやり見える
○蚊のようなススのような物が飛んでいるように見える(飛蚊症)
○視野が欠けて見えない部分がある
○夜間に物が見えにくい
○直線が歪んで見える

糖尿病性網膜症の治療

糖尿病性網膜症の治療は、糖尿病性網膜症の進行状態によって、糖尿病の内科的治療のみでよいこともあれば手術治療が必要になることもあります。糖尿病性網膜症が軽度の単純網膜症の時期は、網膜に限局した眼底出血や網膜浮腫・白斑(進出物)がありますが、糖尿病性網膜症の自覚症状はありません。単純網膜症の時期は、糖尿病の内科的治療(血糖コントロールによる網膜症の進行をくいとめる治療)が中心で、眼科では定期検査(視力検査・眼底検査・眼圧検査など)による経過観察になり、糖尿病性網膜症に対する手術といった眼科的治療はありません。単純網膜症から前増殖性網膜症に進行してしまっている時期でも糖尿病性網膜症の自覚症状はあまりありませんが、次の増殖性網膜症に移行することを防ぐ目的で行われる網膜光凝固術(レーザーで血管閉塞量領域を焼くの手術)によって失明を回避する可能性がかなり高まるといわれています。増殖性網膜症の時期では、網膜にもろく破れやすい新生血管が現われて硝子体にまで病変が拡大し、自覚症状が現われます。網膜の新生血管が破れて眼底出血(硝子体への広範囲の出血)を繰り返して増殖性変性や硝子体変性萎縮による糖尿病網膜剥離を引き起こして失明のリスクが極めて高くなります。増殖性網膜症の時期は糖尿病の内科的治療に関係なく網膜症が進行しますから、糖尿病性網膜剥離や緑内障を引き起こして失明を起こしてしまうことを回避する積極的な眼科治療(手術治療)が必要になります。網膜光凝固術(レーザー光凝固)で効果が見られない場合は硝子体手術を行います。増殖性網膜症の時期の硝子体手術では失明は避けられても視力回復はあまり期待できないようです。また、手術後に同じような症状を繰り返すことがあり、進行すれば網膜剥離や緑内障などを引き起こします。

糖尿病性網膜症の手術1

糖尿病性網膜症の手術治療には、網膜光凝固術(レーザー光凝固)治療と硝子体手術があります。網膜光凝固術(レーザー光凝固)治療とは、網膜にレーザーを照射する手術治療です。糖尿病性黄斑浮腫や増殖性網膜症に対して網膜光凝固術(レーザー光凝固)治療が行われます。糖尿病性黄斑浮腫に対するレーザー手術治療の目的は、網膜の毛細血管瘤や浮腫(むくみ)にレーザーを照射して浮腫(むくみ)を軽減して視力改善を目指すことです。ただし、黄斑部の機能低下の進行度合いによっては視力の改善がみられないことがあります。増殖性網膜症に対するレーザー手術治療の目的は、血流の悪い部分の網膜にレーザーを照射して凝固させることで網膜の黄斑部など大切な部分への酸素不足を改善して、新生血管の増殖を抑制し増殖性変化(増殖膜)を抑制して増殖性糖尿病性網膜症の進行を食い止めて、増殖性網膜症の悪化による網膜剥離や緑内障による失明を回避することです。ただ、増殖性網膜症のレーザー治療は視力回復を目的としているものではないと考えたほうが良いようです。
レーザー治療も硝子体手術も手術であることに変わりなく、手術には後遺症や手術による合併症のリスクを伴いますから、納得した上で手術に臨むことが大切です。また、糖尿病性網膜症のレーザー治療や硝子体手術を行っても、血糖値のコントロールが不十分では糖尿病の合併症である糖尿病性網膜症の進行を食い止めることは困難です。糖尿病の自己管理(血糖値の管理)をして大切な眼を守りましょう。

※糖尿病患者は白内障を合併していることが多いです。白内障を合併している場合は、一般的に網膜光凝固術(レーザー光凝固)治療や硝子体手術の際に、白内障の手術も同時に行われます。

糖尿病性網膜症の手術2

糖尿病性網膜症の手術治療には、網膜光凝固術(レーザー光凝固)治療と硝子体手術があります。糖尿病性黄斑浮腫や増殖性網膜症に対して硝子体手術が行われます。糖尿病性黄斑浮腫に対する硝子体手術では、手術後に黄斑浮腫は急速に消失して半年~1年ほどで視力の改善が見られ、白内障も合併している場合は白内障手術も行われるため視力の改善が大きく期待されるとされています。糖尿病網膜症が進行した増殖性網膜症の時期では、網膜から硝子体にかけての広範囲の眼底出血が起きたり、網膜に増殖膜ができたり、更に網膜剥離がおきて極端な視力低下を引き起こしたりします。増殖性網膜症の硝子体手術では、出血や濁りの吸引除去、網膜が引っ張られて牽引性網膜剥離を起こさないように増殖膜の除去、新生血管の電機凝固などを行います。網膜剥離や網膜裂孔(網膜に穴が開いている状態)の場合は、その処置を施します。
糖尿病性網膜症は糖尿病の合併症ですから、糖尿病性網膜症のレーザー治療や硝子体手術を行っても、血糖値のコントロールが不十分では糖尿病性網膜症の進行を食い止めることは難しいです。糖尿病の自己管理(血糖値の管理)をして大切な眼を守りましょう。

※糖尿病を患っていると白内障を合併していることが多く、白内障がある場合は、糖尿病性網膜症の網膜光凝固術(レーザー光凝固)治療や硝子体手術の際に、白内障の手術も同時に行われるのが一般的です。ただ、重度の糖尿病性網膜症を合併しているときは眼内レンズ挿入術はできません。

糖尿病性黄斑浮腫の治療

糖尿病性黄斑浮腫とは、糖尿病性網膜症の症状のひとつです。糖尿病性黄斑浮腫の治療の絶対的に確実な治療方法は確立されていないようです。糖尿病性黄斑浮腫の治療には、糖尿病の内科的治療をはじめとする網膜光凝固術(レーザー光凝固)治療や硝子体手術のほかに、ステロイド眼球内注射があります。ステロイド(副腎皮質ホルモン)は血管からの液体成分が漏れ出ることを減らして黄斑浮腫を減らす効果があるのですが、ステロイドは糖尿病を悪化させてしまいます。そこで、内服や注射による全身投与ではなく、黄斑部だけに効果を集中させるべく、長期間作用が続くステロイド剤を眼球に直接注射します。ステロイド眼球内注射には眼圧上昇・白内障の進行・感染症などのリスクがあり、注射の効果がある数ヵ月後に黄斑浮腫が再発すれば注射が再度必要になります。

※糖尿病性黄斑浮腫とは、糖尿病が原因による網膜の血管障害の結果で、網膜血管に毛細血管瘤ができたり、毛細血管から血液中の液体(水分や脂肪)が染み出たりすることで、網膜の黄斑部(物を見ることに関係する網膜の中心部分)に浮腫(むくみ)が生じている状態です。

腎臓の機能

糖尿病性腎症は、高血糖の状態が続くことで腎臓が障害されて腎臓機能が低下し、悪化すると腎不全になってしまう糖尿病の合併症です。腎臓の機能についての基礎知識を持って糖尿病性腎症を理解することは、腎臓が大切な臓器であることを知るだけでなく、糖尿病の予防治療=糖尿病性腎症などの合併症の予防治療がいかに重要かの理解に繋がります。
腎臓の主要な機能は血液のろ過や浄化の役割です。そのため腎臓の血管が障害されると腎臓の機能も損なわれます。腎臓では体液が一定以上に濃くなるのを防ぐために、尿量を調節したり再吸収したりしています。糸球体のろ過機能で体に必要な血液成分やタンパク質を体に残し、老廃物や余分な塩分・糖分・水分などは原尿(尿の元になる液)として尿細管に移動します。尿細管では原尿が再度ろ過(再吸収)されて濃縮されます。濃縮された原尿は膀胱に移り、膀胱から尿として排出されます。糖尿病性腎症が進行すると腎臓機能の回復は見込めず、可逆的に悪化し人工透析が必要になり、最悪尿毒症に陥り生命維持に関わる状態になります。持続的な糸球体内圧が上昇することによる糸球体硬化が、糖尿病性腎症の根本的な原因と考えられています。
腎臓の機能(腎臓の働き)はおよそ次のとおりです。
○体内のいらなくなったものを排出します。
○体内の水・ナトリウム・カリウムの量を整えます。
○血圧を整えます。(腎性高血圧の主な原因は、水分・塩分が体内に溜まることによります。)
○骨髄で赤血球が作られるのを助けます。
○血液を弱アルカリ性に保ち、血液の細胞の働きを良くします。
○血液中のカルシウムの吸収を助けます。
○いらなくなったホルモンを壊したり捨てたりします。

※腎臓の位置は、腎臓は腹腔の上部(横隔膜の下)にあって、腹部脊椎の左側と右側に1つづつあって、右腎は左腎よりやや低い位置にあります。腎臓の形はソラマメ状で拳よりやや小さく約150gで、通常は左腎が右腎よりも重く大きいです。

糖尿病性腎症の検査

糖尿病性腎症の検査で重要なのが尿中微量アルブミン検査です。尿中微量アルブミン検査によって糖尿病性腎症の早期発見が可能です。また、尿中微量アルブミン検査は糖尿病性腎症の進行程度を調べるのに適した検査方法とされています。糖尿病性腎症が進行した第3期(糖尿病性腎症の病期)になると、尿に多量のタンパク質がでて尿蛋白検査で陽性反応が見られます。たんぱく尿がでる第3期には糖尿病性腎症はかなり進行して腎機能が低下していますから、これを回復させるのは困難です。自覚症状がなく通常の尿蛋白検査で陰性の糖尿病性腎症の第2期まで(糖尿病腎症の初期・早期の時期)に有効な検査方法が尿中微量アルブミン検査なのです。アルブミンとはタンパク質のひとつで、尿アルブミン値の正常値は1日あたり30mg以下です。糖尿病性腎症2期(早期腎症)になると尿中微量アルブミン検査で陽性になります。たんぱく尿が出る前のこの時期に血糖を厳格に管理することで腎症が治る可能性があるとされています。この時期を過ぎると血糖コントロールをしても腎症は進行し、血糖管理が甘いと更に急速な進行が促されてしまいます。糖尿病と診断されたら定期的に尿中微量アルブミン検査を受けて腎症の進行を食い止めましょう。
糖尿病性腎症の診断基準としては幾つかの検査の結果によりますが、糖尿病を発症してから5年経過して持続性のタンパク尿がでているならば糖尿病性腎症が強く疑われます。糖尿病でタンパク尿が陽性であっても糖尿病性腎症とは限りません。他の腎臓病との鑑別が必要な場合があります。タンパク尿の原因が他のタンパク尿がでる病気が原因でないことを確かめるために腎生検(腎臓の組織の一部を取って調べる検査)をすることがあります。

糖尿病性腎症の病期分類

糖尿病性腎症は第1期~第5期までの5期に病期分類され、第3期に至る前の治療が糖尿病性腎症の進行を食い止め腎臓機能を回復する治療効果の分岐点といえます。第3期以降は糖尿病の治療をしていても糖尿病腎症の症状が進行し腎機能の回復も困難で、不十分な糖尿病管理がさらなるに症状の悪化を加速します。定期健康診断で糖尿病の予兆を発見し、糖尿病と診断されたら定期的な尿中微量アルブミン検査を受けて、糖尿病腎症を早期に発見して早期の治療を開始することが肝心です。
■糖尿病性腎症の病期分類:第1期(腎症前期)
■糖尿病性腎症の病期分類:第2期(早期腎症期)
■糖尿病性腎症の病期分類:第3期(A顕性腎症前期・B顕性腎症後期)
■糖尿病性腎症の病期分類:第4期(腎不全期)
■糖尿病性腎症の病期分類:第5期(透析療法期)