糖尿病の食事療法は、糖尿病治療の基本になる治療方法です。運動療法や薬物療法はこの食事療法が上手く行われていることが前提で効果が得られます。インスリン注射や飲み薬などで糖尿病の薬物治療をしていても、この糖尿病の食事療法は必ず行う必要があります。糖尿病の食治療法が不十分ですと、薬の効果が強くなったり弱くなったりして安定した血糖値を得ることが難しくななるからです。2型糖尿病患者の7割以上が食事療法を行うだけでも血糖コントロールが可能といわれています。糖尿病だからといって食べてはいけない食べ物はありません。糖尿病の食事療法で適切なエネルギー摂取を守り、規則正しく、多くの種類の食品を食べるようにします。日本糖尿病学会の「糖尿病食事療法のための食品交換表」を利用するのも良いです。最近では、糖尿病用のカロリー計算された食事や食材の宅配や糖尿病食のレトルト食品などもありますし、栄養管理がしやすいコンピューターソフトもあります。生活パターンに応じてこれらの糖尿病の食事管理をしやすいサービスを利用するのも良いです。
糖尿病の食事療法は医師や栄養士の指示に従って行います。血糖値・合併症・肥満度・性別年齢・活動量など糖尿病患者個々人によって1日当たりのエネルギー摂取量が決められます。このエネルギー摂取量内で栄養素に過不足が生じない食事内容にします。
標準的なエネルギー摂取量(kcal)の計算式は、軽労働または中労働の人では「標準体重(kg)×30(kcal/kg)」、肥満の人では「標準体重(kg)×25(kcal/kg)」です。標準体重(kg)の計算式は「(身長(m)×身長(m))×22」です。肥満はBMI(body mass index)が25以上です。BMI値の計算式は「体重(kg)÷(身長(m)×身長(m))」です。日本人はBMI値が25~30でも糖尿病・高脂血症・高血圧の発症が多いため、肥満の判断の基準がBMI値25以上になっています。
糖尿病の食事療法
糖尿病の食品交換表
糖尿病の食事療法の基本はエネルギー摂取の枠を超えず且つ栄養バランスのとれた食事です。糖尿病患者が日常生活の中で食品成分表を使って栄養計算するのは難しいため考案されたのが「糖尿病食事療法のための食品交換表」という単位で栄養計算をする方法です。「糖尿病食事療法のための食品交換表」を食生活に応用することで糖尿病の食事療法を容易にしてくれます。「糖尿病食事療法のための食品交換表」は、食品が栄養素別に「1~6表+その他」に分類されており、20単位(80Kcal/単位)の総合単位数がそれぞれに割り振られ、配分された単位数を超えないように食生活を整えます。1日に必要なエネルギー摂取量を理解して、積極的にこの食品交換表を利用して栄養バランスのとれた献立にしてください。糖尿病患者によって1日に必要なエネルギー量は異なりますし、最初から自力で「糖尿病食事療法のための食品交換表」を使いこなすのは大変です。主治医や栄養士に相談することが糖尿病の食事療法の基本でもあります。ただ、「糖尿病食事療法のための食品交換表」が糖尿病の食事管理を容易にしてくれるといっても、使いこなすことが簡単でないケースもあります。そのような時は、糖尿病用のカロリー計算された食事や食材の宅配などのサービスを検討するのもよいかもしれません。
■糖尿病食事療法のための食品交換表(表/配分単位/食品)
表6(野菜類)は他食品に比してエネルギーの低い食品で、単位オーバーを心配するよりも不足しがちな食品です。何単位というよりは、より多くの種類の野菜を取り混ぜて最低1日300gと考えるのが良いようです。
・表1/11単位/はご飯・パン・うどん・いも類など
・表2/1単位/果物
・表3/4単位/肉・魚・卵・チーズなど
・表4/1.4単位/牛乳・乳製品
・表5/1単位/油・バター・マーガリン・マヨネースなど
・表6/1単位/野菜類
・その他/0.6
糖尿病に良い食品選び
食後の血糖値だけに限って糖尿病に良い食品を考えてみると、食後の急激な血糖値の上昇は炭水化物によることから、GI値(グリセミック指数)が低い食品が糖尿病に良い食品となります。同じカロリーの食品でも種類によっては血糖値の上昇に違いがあります。グリセミック指数とは血糖値の上がり具合を数値化したもので、食品中の糖質量や消化スピードで決まります。GI値の高い食材から低い食材に変えるのも血糖値をコントロールする食事に繋がります。糖尿病に良い食品としてGI値を考える場合は、糖質の多い食品を食するときに考える数値で、糖質の少ない肉や魚には当てはまりません。また、低GI値の食品なら「いくら食べても大丈夫」というわけでありません。GI値が高くても低くても食べ過ぎれば太りますし、エネルギー摂取が多すぎれば血糖値は上がります。糖尿病の食事療法は、動物性脂肪や炭水化物の摂取を減らすといったカロリーの摂取量を減らす治療が中心でが、必要な栄養素を過不足なく摂取することが大切です。糖尿病に良い食品だからとそれだけ食べていても良くないです。バランスのとれた食事が必要です。
■糖尿病に良い食品:炭水化物の選び方
○白米より玄米のほうがGI値が低いので血糖値の上昇を抑えられます。五穀と呼ばれる玄米・麦・ヒエ・アワ・キビ・黒米などはGI値が比較的低い炭水化物です。ビタミンやミネラルも豊富で栄養バランスもよいです。また、良く噛む事でインスリンの分泌が活性化される効果もあります。
○麺類のGI値は様々です。ビーフン・うどんは消化が良くGI値が高い食品です。蕎麦・全粒粉のパスタ・春雨などはGI値が比較的低い炭水化物です。色の白い麺類のほうが血糖値を上げやすいと考えて良いようです。
○パンのGI値は様々です。ライ麦パン・全粒粉パンは、GI値が低く血糖値の上昇が緩やかな食品です。菓子パン・フランスパン・食パンはGI値のとても高い食品です。パンを食べるときは、バターやジャムは少なめにしましょう。
糖尿病に良い食べ合わせ
食後の急激な血糖値の上昇は炭水化物ですから、GI値(グリセミック指数)が低い食品が糖尿病に良い食品といえます。そして、炭水化物と他の食品を組み合わせることでも、GI値(グリセミック指数)の低い食品を食べて血糖値の上昇を抑えるのと同様の状態にすることができます。糖尿病に良い食品の組合せとして良く知られているのが食物繊維です。糖尿病に良い・血糖値を下げるといった効果がある食品はいろいろありますから血糖値のコントロールに役立てましょう。
■糖尿病に良い食品・食材の組合せ:食物繊維と炭水化物
インスリン抵抗性(インスリン感受性の低下)を増大させる原因の一つに、血中脂肪値が高い場合があります。昆布・ワカメなどの海藻類を代表とする水溶性食物繊維はコレステロール値や血中脂肪値を改善し、インスリンレセプターの感度の低下を抑える働きも期待できます。不溶性食物繊維は、糖分の吸収が緩やかにして血糖値の急激な上昇を抑えますから、インスリン生産や分泌する負担を減らします。ライ麦粉・干し柿・ゴボウなどは水溶性と不溶性のどちらもバランス良く摂取できる食材です。
ひじきご飯・わかめご飯・わかめ蕎麦・山菜蕎麦のように炭水化物に食物繊維を組み合わせることで、少ない量の炭水化物でも満腹感が得られます。
■糖尿病に良い食品・食材の組合せ:酢・柑橘類・乳製品などを炭水化物と一緒に食べることでGI値の上昇を抑えます。
○酢:食事の献立に酢の物を一品添えてGI値を低くします。酢の和え物・南蛮漬け・すし飯などがあります。特にワカメの酢の物はおすすめです。
○柑橘類:料理にレモン・かぼす・ゆず・ライムなどを絞って醤油の代わりに使います。
○乳製品:牛乳やヨーグルトは食前・食中・食後でもGI値を下げることができます。チーズもGI値を低くすることができます。
○大豆製品:特に納豆がおすすめです。お餅を食べるときはきなこ餅やお汁粉がよいです。
糖尿病に良い調理方法
糖尿病に良い食品・食材の調理方法があります。調理方法を工夫してください。
■糖尿病に良い食品・食材の調理方法
○砂糖に関しては、血液中のブドウ糖をうまく処理できずに血糖値が上がるのが糖尿病ですから、糖尿病の食事では特に砂糖を減らすのは当然といえます。照焼きや煮物、間食(おやつ)など、甘みが欲しい場合は、砂糖でなくオリゴ糖などの人工甘味料を使用するのが良いです。黒砂糖は果糖も含みますが糖分代謝に必要なビタミンなども多く含みますから、白い砂糖よりは良いと考えられます。
○固めの炊き方・ゆで方のほうが吸収が遅く糖のピークを抑えられます。
○料理に用いる油には、不飽和脂肪酸を多く含む植物油(サラダ油、オリーブ油など)を使用します。動脈硬化予防になります。
○肉類は煮る・蒸す・網で焼くことで余分な脂肪を取り除きます。
○食塩の量を減らします。減塩醤油や減塩みそを利用したり、醤油・食塩の代わりにレモン・ゆず・かぼすなどの柑橘類を利用します。
※炭水化物が食後の血糖値を上昇させます。食後の血糖値だけを考え場合、脂肪をいくら食べたとしても食後の血糖値はほとんど上がりません。勿論、脂質の摂りすぎは良くないことです。
※人工甘味料の代表的なものはエリスリトールと呼ばれる人工甘味料で、人体で代謝されずにそのまま体外に排出されます。果物に含まれる果糖も血糖の上昇は緩やかです。
糖尿病に良い食べ方
糖尿病に良い食べ方があります。よく噛んでゆっくり食べる・規則正しく1日3食の食事をとる・1回の食事はバランスをとるなどです。また、糖尿病に良い食品・食材を選び、食べあわせを考えたり、調理方法を工夫することでも糖尿病に良い食事になります。
■糖尿病に良い食べ方:食後の血糖値を上げにくくする食べ方
食後の急激な血糖値の上昇は糖尿病患者にとっては避けたいことです。食事の仕方で食後の血糖値を上げにくくする食べ方があります。次のことが習慣になるようにしましょう。
○ゆっくり食べます。早食いは糖質が急激に吸収されることで血糖値の上昇を促します。また、よく噛むと満腹感を感じやすくなります。
○規則正しく1日3食の食事をします。食事を抜くとまとめ食いになりやすいですし、食事の時間が不規則で食事と食事の間が短くなったりします。どちらも血糖値が上昇しやすくなります。
○1回当たりの食事量の配分はバランスのとれたものにしましょう。1日3回の規則正しい食事であっても、1回の食事量が多いと血糖値が上がりやすくなります。1回の食事のバランスに気をつけましょう。
糖尿病の外食時の注意
糖尿病の場合は、外食は血糖値を管理しにくいといえます。糖尿病の外食には注意が必要です。エネルギー量の摂りすぎや栄養バランスも偏りがちになりますから、家で実践している食事の食材や量や調理法などによるエネルギー量を思い出しながら、外食時のメニューを選びましょう。糖尿病に良いメニューの選び方のコツとしては、肉料理より魚料理、一品料理より定食、洋食や中華より和食を選ぶことです。魚料理は肉料理より負飽和脂肪酸を多く含んでいますから動脈硬化の予防になり、定食は栄養バランスをとりやすく、和食は中華や洋食よりも油の使用量が少ないです。
■糖尿病を考えた外食メニュー:和食の注意
和食は中華や洋食よりも油が少ないのでおすすめです。ただ、和食にはご飯など炭水化物の多い食材が多いです。ご飯の量・天ぷら・甘い味付けの煮物は食後の血糖値を上げるので注意が必要です。天丼・カツ丼・天ぷら定食・天ぷらうどんなどは要注意です。酢の物や野菜を組み合わせて食べることで、食後の血糖値の急激な上昇を抑えましょう。
■糖尿病を考えた外食メニュー:中華の注意
中華は前菜から食べます。前菜はGI値が低い物が多く食物繊維や酢を摂ることができます。脂肪を取り過ぎないようにするには、炒め物よりも蒸し料理・茹で料理がおすすめです。炒め物はカロリーが高いものが多いです。素材に気をつけて、甘い味付けや衣の少ないものを選ぶことで血糖値は上がりにくくなります。焼そばやチャーハンは炭水化物が多いですから、食後の血糖値を上げるので注意が必要です。デザートの杏仁豆腐などは甘いシロップを飲まなければ大丈夫です。
■糖尿病を考えた外食メニュー:洋食の注意
洋食は前菜から食べます。パスタやピザはパンよりも血糖値が上がりにくいです。パスタはオリーブオイルを使っていることが多いので、油に関しては他の油ほど気にしなくても良いようです。デザートは、ケーキやアイスクリームより果物のほうが血糖値を抑えられます。
■糖尿病を考えた外食メニュー:ファーストフードの注意
ファーストフードは最も注意すべき外食です。高カロリー・高脂肪・高炭水化物でビタミンやミネラルを摂りにくい食事といってよいです。ジュース類は生絞りジュースを選びましょう。できればファーストフードは避けることをおすすめします。
糖尿病とお酒
糖尿病と飲酒の関係は、お酒を飲む人には辛い話になります。アルコールはエネルギー(7.1kcal/g)だけで栄養価値がなく、糖尿病患者がアルコールを摂取すると代謝異常をもたらすため、原則として禁酒させるべきとの考えが主流です。少量のお酒は食欲増進やストレス解消に役立ちますが、お酒を飲み始めると、つい飲みすぎ・食べすぎになりがちです。糖尿病ならば基本的に禁酒です。特に、経口血糖降下薬の服用やインスリン注射の治療をしている糖尿病患者の場合の低血糖を起こすリスクには注意を要します。アルコールは肝臓からのブドウ糖の放出を抑える働きがあり、血糖値が下がりやすくなるからです。糖尿病とお酒の関係は良好とはいえませんが、お酒は社交辞令としての役割があったりします。お酒の量は糖尿病患者によって異なります。主治医に相談して必ず指示を守りましょう。
お酒のカロリーはアルコール度数の高い酒類になるほど高いです。「糖質ゼロ」とか「カロリーオフ」などの表示があるお酒であってもカロリー(エネルギー)はゼロ(0)ではないのです。糖質0.5g(100mL当り)未満であれば「糖質ゼロ」と表示できます。飲料関係では100ml当たり20kcal以下ならば「低カロリー」と表示ができ、酒類で20kcal以下ならばアルコール度数が低いものに限られます。健康な人でも、毎日の飲酒量がビール大ビン1本を越えると糖尿病の発症確率が高くなるとの報告があります。糖尿病ならば原則禁酒、お酒を飲むなら飲みすぎ厳禁です。
■糖尿病でも飲酒が認められる条件
○長期に渡って血糖コントロールが良好。
○経口血糖降下薬やインスリンによる治療をしていない。
○肥満でない。
○糖尿病合併症がない。
○その他慢性疾患がない(肝臓・膵臓・心臓の疾患や動脈硬化など)
○自制心がある。
条件を満たす場合は、総エネルギーの約10%以内(2単位、160kalまで)を適量として飲酒できるようです。
■糖尿病における適量と考えられるアルコール量の目安
○日本酒(14%):1.8合
○ビール(5%):中ビン1本
○焼酎(25%):お湯割2杯(0.6合)
○ワイン(14%):グラス3杯
○ウィスキー(43%):ダブル1杯
糖尿病と間食(おやつ)
糖尿病の食事療法は、カロリー摂取量を守ってバランスの良い食事を毎日規則正しく3度食べて、間食(お菓子や嗜好飲料などのおやつ)をしない生活習慣が基本です。間食として食べるお菓子や嗜好飲料はカロリーが高く糖分も多いからです。砂糖は体内での吸収が早く、摂取後に血糖値を急激に上昇させてしまいます。間食をするならば注意が必要です。糖尿病患者によって間食の条件が異なりますから、主治医とよく相談しておくことが大切です。
■糖尿病と間食(おやつ):間食の量と間食をとる時間
間食は1日の必要エネルギー量範囲に収まるように、午後3時頃に摂ります。夕食後の間食は夜間の血糖値をあげる原因になります。
■糖尿病と間食(おやつ):お菓子の選び方
おやつには甘い物が多く、血糖値が上がりやすいものばかりです。血糖値を急上昇させやすい代表的なものに、チョコレート・アイスクリーム・ケーキなどがあります。おなかが空いて困るときはカロリーが低く満腹感を感じやすい食品にしましょう。お腹がすいたら、ノンカロリー食品や野菜スティックを食べる・お茶を飲むなどがおすすめです。血糖値が比較的上がりにくいものに、果物・寒天・無糖ヨーグルト・きな粉・さつまいもなどがあります。
■糖尿病と間食(おやつ):嗜好飲料の選び方
ドリンク類を買うときは表示を確認しましょう。フルーツジュース・果汁を多く含む野菜ジュース・スポーツドリンクで糖分を多く含んでいることがあります。飲料は吸収が早く、加えて甘い飲料はカロリーだけでなく血糖値を上げやすいので注意が必要です。また、冷たい飲料は本来の甘さを感じないため、思いのほか糖分の高い飲み物だったりします。飲料を選ぶときは、無糖のお茶や烏龍茶などがおすすめです。

